ヤクシマリンドウ

2020/08/12撮影

松田です。

屋久島を代表する夏の花といえばヤクシマリンドウではないでしょうか?

リンドウは晴れていないと花を開かず、開花した姿を見るには運か情熱が必要です。

岩場にそっと咲くこの花はかつて園芸用に盗掘が繰り返されたようで、登山道沿いの個体は少なく、絶滅危惧所ⅠB類となっています。

風雪吹き荒れる奥岳の岩場に生きるヤクシマリンドウ

人間なんて生身じゃほんの数センチの花にすら敵いません。

日本の高山植物は一般的に北方起源と言われており、氷河期の気温の低い時期に低標高エリアおよび低緯度地域に分布を拡大させ、氷河期の終わり(温暖化)によって日本アルプスなどの高標高エリアおよび高緯度地域に取り残されて現代の分布に至ると言われています。

そんな彼らの生き残ったエリアは生物学的にはレフュジア【refugia】 と呼ばれます。

東シナ海に浮かび、奥岳と言われる2000m級の山々からなる屋久島がレフュジアとして果たす役割は非常に大きく、氷河期に南下してきた植物たちの大切な避難所になっています。

屋久島を語るうえでのキーワードは『多様性』

多様性が維持できるということは自然が豊かな証拠です。

海底から宮之浦岳にかけての数千メートルの高度差が産み出す多様な生態系の楽園、その一番高いところに生きているのが高山植物たち。

現在の温暖化が人間の経済活動の仕業なのか宇宙規模の変化なのか議論していても、どちらの言い分が正しいのか善か悪かはどうでもいい。

事実としてここ何十年で気温が上昇していて、いよいよ身近なところにも牙をむき始めています。

低標高域の生き物たちは北上したり標高を上げればいいですが、ヤクシマリンドウはじめとする離島の天上界に生きるものたちはもう上には行けないし外へもいけない。そしてこのまま温暖化が進めば下から上がってきた植物たちに飲み込まれていく。

そんな未来を想像するのは僕だけでしょうか?

人間の経済活動が地球に負荷をかけていることは明白な事実です。

名前を知らない植物や動物たちが絶滅しようとも関係ない?

たしかにその気持ちはわかります。そんな生きとし生けるものすべてに愛しさや興味を持てる人なんて世界に何人いるのか。

だけど僕は岩場に生きるヤクシマリンドウを見て心動いてしまった。この花の生きる世界を奪ってはいけないと思いました。

常に世界は変動し、進化も進行し移り変わっていきます。もし『絶滅』というのが変化の過程だとしたら仕方がないのかもしれません。

その変わり『新型』の生き物たちが生まれるのも進化の過程と受け入れ付き合っていかなくてはならない。

人間本意の善悪は自然界の中ではどうでもいい。

地球のために何ができるのか?ヤクシマリンドウはそんなことを毎夏思い出させてくれる花です。また来年あえることを祈って。

そしてこの島が人類のレフュジアとなりうることに想いを馳せて


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