5.18豪雨

あらよ!松田です。

今回紹介するのは令和元年5.18豪雨のときの写真です。

ちょうど今から一年前の今日、屋久島では記録的な大雨が降り登山者が登山口に取り残され、自衛隊までも出動するということがありました。

雨量は最大で100㎜/hを超え、山中では恐らく累積1000㎜を超える大雨となりました。一か月分の雨が一日で降ったと言えばわかりやすいですね。当日の登山者は多く300名以上が下山できずにいました。

そんな屋久島の歴史に名を刻んだあの日、僕は大雨の天気予報に歓喜し狙っていた沢に写真を撮りに行っていました。

『水に沈む森』を撮りたい。そんな思いで撮影に行ってみると、普段は穏やかな流れの沢は轟音とともにこれでもか!というほど荒ぶる生き物のように躍動していて、美しさと怖さの両方を覚えました。とうてい人間の手に負えるもんじゃないなと。だけどそんな状況で、傘で大雨からカメラを守り、一枚撮るたびにレンズの水滴をぬぐい、動かぬよう必死に三脚を握りしめて写真を撮っていました。

数枚撮るのがやっとで車まで戻りホッと一息ついていると、土砂崩れで孤立したという情報が入ってきました。それからはみんなで集まったり、情報収集したりとバタバタで被害の全容も明らかになり、あの日撮った写真をなかなかオープンできずにいました。

屋久島の魅力は生きた自然がすぐ身近にあるということ。普段は美しさや食べ物やその恩恵を受けることが多いのだけど、いったん牙をむくと理不尽に容赦なく襲い掛かってきます。だけどそれこそが自然。理不尽に思うのは現代人が理から離れすぎたからで、野生に生きる草花や動物たちは抗いながらも受け入れるしかないでしょう。

そして印象的なのは大雨から数日後、山に入ったときには山中はまったくといっていいほど変化はなく、ヤクスギたちは何事もなかったように立っていて、『小僧どうした。1000年も生きていればこのくらいのことはよくあるぞ』と言われたような気がしたことです。森の中には平和がありました。

あの大雨をどうとらえるか。『冬山に入らなければ、雪崩にはあわない』これってリスクマネジメントを考えるうえで重要なポイントだと思います。『山に登らなければ滑落しない』、『あの日屋久島に来なければ災害にあわなかった』、『車を運転しなければ事故らない』、『家にこもっていればコロナに感染することはない』・・・。そこにいなければ何も起こらない。ゼロリスク神話。

いろんな思いがあって屋久島に来る人がいて、僕はそれを案内する仕事をしている。自然の営みや美しさを伝えたい。ときには怖さも。ただ、考えに考えてリスクを減らす努力をしても自然のなかに身をおくことはリスクがゼロにはならない。だからこそ謙虚に慎重に自然の声に寄り添う時間を作り、自分なりに考えることが必要です。

『緊急事態宣言』が多くの都道府県で解除されましたが、これからどんなことが起こっていくのでしょうか。感染者数も減り、リスクは減りました。でもゼロじゃない。だけどいつまでも巣ごもりじゃ経済が回るどうこうの前にヒトの心がダメになっちゃう。これもまた重要なリスクです。

ネクストコロナの世界は理不尽にも常に感染という『リスク(自然)』を感じながらの世界になるのじゃないでしょうか。それが恐怖なのか別のものなのか。不謹慎にも僕は多くの人にとって『災害』である昨年の大雨を『美しい』ものと感じていました。これから社会は経済は動いていきます。踊らされるよりは踊りたい。いまいちどリスクにどう向き合うか考え、ライフスタイルを見つめ直すチャンスなのかもしれないですね。

自分もまだ靄の中を行く先もわからずさまよっている途中です。とりあえずは足るを知り、毎食の飯に感謝し、ゆっくりと光を探していきたいなぁ。


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