Psammoecus scitus

【屋久島図鑑】No.3
「んー。あなたはだぁれ?」と、心の中で呟きながらシャッターを切る。
トトロなら答えてくれるのですが、物言わぬ虫たちは写真を撮ってからが大変な場合があります。
それは同定と言って、生物の名前が何なのか調べる行為です。
基本的に図鑑を使いますが、載っていない場合があります。

この写真の昆虫の場合も載っていませんでした。
可能性は3つ
1.新種(未記載種)
2.図鑑が印刷された以降に見つかった新種
3.近隣諸国からやって来た外来種

1.の場合は私には太刀打ちできません。それに標本が必要ですが、写真しかありません。
2.3.の場合は論文を読む必要があります。
ただ、無暗に論文を探しても意味がなく、最低でも「属」と言う分類上のグループの名前が分かる必要があります。この属名が分かるまで半年。その後、下記の参考文献を見つけ同定に至りました。
※ずっと調べていたわけではありませんが。
この「 Psammoecus scitus 」が新種として世に公表されたのは2014年でした。
※これは学名と言って、世界共通の生物の名前です。日本の名前、つまり和名はまだありません。
結果としては「 2.図鑑が印刷された以降に見つかった新種 」でした。
つまり、2014年より前この昆虫を見つけても名前は分かりませんでした。
人間の科学力はありとあらゆることを解明し、自然について知らないことは無いように思えます。
しかし、まだまだ人間は自然を解明する途中です。
だから、今日も私はシャッターを切ります「 あなたはだぁれ?」と、心の中で呟きながら。

「 Psammoecus scitus 」 の分布は奄美大島、沖縄、宮古島、石垣島、西表島、与那国島となっています。
たぶん、この写真は屋久島初記録の瞬間。
体長は約3㎜。写真はトリミング無し。

参考文献:Yoshida, Takahiro & Toshiya Hirowatari. 2014 A revision of Japanese species of the genus Psammoecus Latreille (Coleoptera, Silvanidae). ZooKeys 403: 15-45.

和名:なし
学名:Psammoecus scitus
分類:コウチュウ目 ホソヒラタムシ科 セマルヒラタムシ亜科
撮影日:2019年9月19日
撮影場所:鹿児島県屋久島町長峰集落

関連記事

  1. ネグロシマメイガ

    【屋久島図鑑】No.17今回紹介する虫は、ほぼ世界中で見られます。…

  2. シモジャナグモ

    【屋久島図鑑】No.26「これってシモジャナイじゃない!?」小石を…

  3. 草むらの命

    松田です。梅雨真っ盛りのなか雨の写真を撮りに行きたいのです…

  4. アカツリアブモドキ

    【屋久島図鑑】No.13愛子岳を登っていると毛がモッサモサのハエが…

  5. 森の子猿

    西部の森を探検していると、よく出会うのが猿と鹿。(ヤクザルとヤクシ…

  6. 奇跡のような日常

    みんなから2ヶ月ほど遅れてのはじめてとなる投稿です。…

  7. タニカワヤリグモ

    【屋久島図鑑】No.24クモが好きです。え!?クモが?と思われる方…

  8. 福の鳥にばったり☆

    こんにちは。福留です。夜にフクロウのような鳴き声を聞いたことはあっ…

PAGE TOP