島の高い山峰に向かえば向かうほど風は強くそして冷たくなっていきます。もし僕がこの世界に暮らすと決めたのなら、相当な覚悟と文明を持ち込まなければ一瞬で死ぬことになります。風はロマンがありますが、山岳においてはときに凶器です。
この写真は屋久島でよくよく見かける杉です。しかし、里でここまで奇形になった杉を僕はまだみたことがありません。杉はかつて直木(すぐき)と呼ばれていたそうです。真っ直ぐに伸びる容姿からそう呼ばれ始めたのかもしれません。
そんな天に向かおうとする杉にとっても、奥岳では風は凶器のようです。頂芽優勢の出鼻をくじかれては脇の枝を伸ばしていき、しかしまたその枝が折られるということを、一体この木は何度繰り返しているのでしょう。
この過酷な山岳に生きる木々たちの奇形さに美を見出した日本人は盆栽という芸術を生みだしました。美しくあることは、無傷で外見的に綺麗であることとは別物だということを無言で表現するために。
汗の匂いをまき散らしながら泥だらけで登ってくる登山者がニコニコと輝きだすのはそういうことなのかな?笑