春田浜のイワタイゲキの開花がはじまり、ぐんぐん春が進行中の屋久島です。
春田浜は隆起サンゴ礁の海岸で、かつてここは海だったことがわかっています。屋久島は今だに隆起し続けていますが、水平に上昇しているのではなく、南東部がもち上がって、北西部がしずみ込みながら隆起しているそうです。なので、東から南にかけては写真のような平らな段丘ができあがり、海岸から山までの距離が比較的長いですが、北から西は海から一気に山がそびえています。
隆起サンゴの上にこれほど植物が多様に展開しているのは春田浜が屋久島で最大規模です。上の写真はドローンで撮影したものです。海岸を一面茶色に覆っているコウライシバにポツポツと緑の玉が点在しているのがわかるでしょうか。これがイワタイゲキです。
ググッと寄っていくとこんな感じで咲いてます。一言、ゴージャスっ! 海岸部は潮の満ち引きで海水がかかったり暴風で潮風にさらされるので、植物にとってはとても厳しい環境のはずです。それが理由なのか奥岳の山頂付近のエリアとどこかにていて木はなく、多くの草の花はとても小さいです。しかし、イワタイゲキはテッポウユリと並んで見事な花を咲かせます。
写真をみるとコウライシバが被覆している場所に生えているのが分かります。隆起サンゴの亡骸がむき出しになった灰色のゾーンには黄色い花が見当たりません。長い年月をかけて、ゴツゴツの隆起サンゴの上に芝がはえて、ようやくイワタイゲキが生きれる環境が整うのでしょう。何百、何千年後の春田浜の春はどんな風景になっているのか、このゆっくりとした遷移のスピードに呼吸を合わせながら、春田浜の未来に思いを馳せると、たまらなく幸せな気持ちになっていきます。
より過酷な環境である波打ち際に行ってみると...
イソマツがへばりついている隣にイワタイゲキが。
あっという間にさっき僕が打ち出した仮説は破られてしまいました。自然の中で僕はいつも、どうしてこんなにも浅はかな予想をしてしまうのでしょう。笑
コウライシバがまだ繁茂していないサンゴの亡骸の上に生きるイワタイゲキもいるんですね。何とまあ過酷な所で...
人間の浅はかさとは裏腹に過酷な環境で生きる植物は、SNSで日々の頑張りやグチを投稿することなく、無言でもくもくと挑戦をし続け、この星を多彩で美しい世界にしてくれています。
ある程度海から離れると、群生の規模が一気に拡大していきます。写真奥に白くみえる花はハマダイコンです。他の植物もたくさん混じってきます。多くの植物が生きていくことができる環境が整っているのでしょう。
かつては隆起サンゴがむき出しだった無機質な世界をここまで多様性ある世界に昇華させたものは、植物たちの地道で永続的な挑戦があったからなのだと思います。
反面、僕たち人間は自分の家以外でどれだけこの星の美化活動に関わっているのでしょうか。
全くが栄養がなさそうな場所で高層ビルのように天にむかって伸びている姿は感動的です。小人になってイワタイゲキをクライミングしてみたいなあ。
マクロレンズでイワタイゲキをのぞいてみると...
あまりの造形美に失神寸前ですっ!
是非、春の春田浜にイワタイゲキ劇をみに行ってみてください。
海と陸のエッジの壮大なロマンを感じれますよ。