外国にはないと言われている「木洩れ陽」という日本独特の言い回しのこの表現が僕はとても好きだ。森に差し込む太陽の光は断然、雨の日が格別だ。
何も期待できないほどの土砂降りでも、こんな瞬間がある。宇宙から見たのなら針の穴ほどの雲の切れ間なのだろう。
太陽の位置と、雲の切れ間、そして僕が一直線になったとき、霧の中からなんともいえない柔らかい明るさで、びしょ濡れの僕のもとへ陽が差し込んできてくれる。奇跡をキャッチできた気分だ。晴天では到底味わえない幸福感。
山での幸せはいつも、下界で忌み嫌われる不快感の先に存在している。