毎年、春になるとヤクザルの母たちは子を産みはじめます。ミーミーと可愛げな声が森に混じりこむと、照葉樹林の新芽の鮮やかさも相まって、何とも晴々とした気持ちにさせてくれます。春の森は幸せいっぱいです。
「なんだ、あの生きものは?」
びっくりした表情で、赤ちゃんがこちらを凝視してきました。生まれて初めて出会った人間がもしかすると僕だったのかもしれません。目に映るものすべてが初めて。きっと感動的な日々を送っているのでしょう。いい目してました。
繰り返される季節と繰り返される里の営みに埋没していく忘れていきたくない感覚を思い出させてくれました。